モノ売りからコト売りへ

 オムニチャネルの流れは、モノ売りからコト売りへの脱却を意味しています。素晴らしい購買体験という「コト」を売ることで、結果的に「モノ」が売れていくということです。
 おなじことが、観光にもあてはまっています。特に中国の方向けの観光は、爆買いのブームは終わり、今はいろいろな体験コースにその人気が移っています。体験をすると、当然のことのように関連商品も売れ行きが伸びていきます。
 実は、「IoT」も「モノ」への「サービス」の付加ということで、道具を売るのではなく、道具を使って得られる成果を売ろうとしています。
 カーシェアリングの流れも同様のことです。スマホもそうですね。
 このように、周りを見渡してみると、実はモノ売りからコト売りへのシフトがどんどん進んでいることがわかります。この「コト」への発想の転換、数年前から言われていることではありますが、なかなか普及していません。具体的にどういうことなのかが理解されていなかったということもありますが、深く染み付いた「モノ」売りの発想から脱却できないのです。

 企業業績として売上の数値を短期的な視点で追いかける以上、数字との距離が近い「モノ」の執着してしまうのは避けられないことです。「コト」売りは結果として数字がついてくるという発想です。数字までにワンクッションを置くことに我慢できるかどうか、ここに「コト」へのシフトができるかどうかの鍵があります。

 財務の指標を結果指標として捉え直接的な目標にしないという考え方は、日本での普及がなかなか進まないBSC、バランストスコアカードが基本とするものです。米国では軍も含めBSCが広く普及しています、ここにオムニチャネルが広がっている基礎があるようです。

 次回は、「コト」への発想転換をいかに実現していくのかという点について述べます。