顧客経験(CX)をデザインするサービスデザイン

私が、サービスデザインへの本格的な取り組みを始めたのは2013年です。
きっかけは、NTTデータ経営研究所の三谷さんから、NRIさんと共同で、デザイン思考をソフトウェア開発に適用するという調査研究を実施しているということを教えて頂いたことです。

日経コンピュータ(だったと思います)に掲載された内容をみて、当時取締役として研究統括とコンサルティング統括をしていたオージス総研でも取り組むべきだと判断し、深い研究を開始しました。

デザイン思考からすぐにたどり着いたのが、IDEO社とスタンフォードのd.schoolでした。そして、今やIT用語になったUXが、2008年ごろまでは一般に使われており、その後IT用語になってからはCX(顧客経験)として扱われるようになっていることを突き止めました。

一般ビジネスではUXはどう扱われているのでしょうか?顧客がその製品やサービスによって得られる経験は、その製品やサービスの価値を決める重要な要素である。
UXは使い勝手ではなく、そのシステムを使って提供されているサービスや企業そのものの価値にも大きな影響を及ぼす重要な要素であることを共通認識として確立することが必要です。
その中心となるのが「顧客経験価値」というもので、単に製品やサービスの機能ではなく、顧客がそれを使用することによって得られる新しい「何か」が差異化要因となっているという考えです。
良く使われる例として「スターバックス」があげられます。スターバックスは、そこのコーヒーがおいしいからということもありますが、スターバックスでコーヒーを買う、飲むことによって得られるものに顧客は価値を見出しているということです。

マーケティングの大家である石井先生も、2006年に既に「経験価値マーケティング」への転換の重要性を指摘されており、「従来のマーケティングの基本的な考え方である4P(Product、Price、Place、Promotion)は基本的にはエンジニアリング中心型、ロジスティックス中心型である。顧客に焦点を当てるどころか、製品のマーケティングに焦点を当てた、セールス志向そのままである。」と述べられておられます。
http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2006/20060130/1063/

「消費者(顧客)インサイト」を起点とするということが重要なポイントです。提供側の思惑で、市場のセグメンテーションやプロモーションを考え失敗しているケースは多くありますし、このブログで指摘しているのもまさにこの点です。
本当に顧客側の視点にたって物事を考えるということは難しいことです。かつて、携帯が広まった際に、事業者側が想像しなかったようなペースで普及し、使われるようになったというように、供給側の視点だけでは予測できないことは既に実証済みですね。
一方、iPhoneの普及は、見事にAppleの思惑にはまっているのですが、利用者はそれを心地よく感じています。UXだけでなく、それを使って得られる新たな経験が、強力な推進力となっていると指摘できます。
このように経験価値を高めるように顧客経験をデザインするということは、ここにあげた事例のほかにIKEAやサウスウェスト航空、ディズニーランドなど非常に多くの実例があり、有効性が証明されています。

次回は、この経験価値マーケティングをさらに深堀にし、サービスデザインへと皆さんを導いていきます。