経験価値マネジメント ~ サービスデザイン/デザイン思考の根幹を理解する ~

カスタマージャーニーマップ、ビジネスモデルキャンパス、サービスブループリントなどサービスデザインやデザイン思考のツールはたくさんあります。
特にカスタマージャーニーマップは、マーケティング業界でも大流行のようです。

しかしながら、大変困った問題があります。
日本は新しいコンセプトがでてくると、根本の理念を理解せず、表面的な道具の使い方に走ってしまう傾向があります。
ITもそうですね。道具を入れることで何かが変わると思ってしまう。手段の目的化はいけないということはずーっと言われ続けてきていますが、そこから脱却できない。
プロダクトアウト的な発想から抜け出すことができないのは、ベンダー側の責任も多大だと思います。

同じことが、サービスデザインにおいて起きては決していけないと思います。顧客起点で考えるべきと言いながら、サービス提供側になるとプロダクトアウト的な発想になってしまっているところがとても多いのは悲しいことです。

ということで、今回はサービスデザインの根幹にある経験価値マーケティングというものを簡単に紹介します。

この経験価値については、Pine & Gilmoreが「経験経済」において製品、サービスまでもが急速にコモディティ化しつつある現在において、企業は自社製品を経済価値の次のステージである経験経済に発展せざるを得ないとしています。
また、Schmitt は経験価値の概念を「経験価値マーケティング」という枠組に体系化し、以下に示す5つの顧客経験価値(戦略的経験価値モジュール(SEM)」にその基礎があるとしています。
①感覚的経験価値「SENSE」
②情緒的経験価値「FEEL」
③創造的・認知的経験価値「THINK」
④肉体的・行動的経験価値「ACT」
⑤準拠集団や文化との関連付け・関係的経験価値「RELATE」

Schmittはさらに「経験価値マネジメント」において、CEMのフレームワークには下図に示す5つの段階が存在するとしています。

 

CEM: Customer Experience Management

この図の表現内容はやや抽象的なため、多くのITベンダが立ち上げようとしているクラウドサービスについて、経験価値マネジメントの5段階を適用してみました。

第1段階:クラウドでどのような経験が期待されているのか
第2段階:当社のクラウドサービスの経験価値は?どういう嬉しいことが顧客企業は経験できるのか
第3段階:どのようにクラウドにおける自社ブランドを定着させるのか
第4段階:顧客とのインターフェイスはどうするのか
第5段階:継続的なサービス投資のしくみは

ユーザが要件を定義してくれる受託開発とは全く異なる新たな発想が、特に第1段階、第2段階、すなわち顧客インサイトを検討する段階で必要となることがわかります。

この顧客インサイトを具体的にはどのように得れば良いのでしょうか。その現実解が「サービスデザイン」です。

次回、このサービスデザインの内容を詳しくご紹介します。