サービスデザインの特徴とそのプロセス

1.エクスペリエンスデザインのプロセス
 顧客経験(CX)の設計において重要なことは顧客インサイトを得ることですが、具体的にはどのように得れば良いのでしょうか。エクペリエンスデザインを受託しているイギリスのサービスデザイン会社Engineのプロセスは以下の様に紹介されてます。

Engine社のエクスペリエンス・デザインプロセス
Engine社のエクスペリエンス・デザインプロセス

出典:Engine社HP, http://enginegroup.co.uk/approach/, 2015/05/01

 そしてその特徴を当社は以下のように示しています。

  • Highly collaborative
  • Led by exploratory research
  • Detailed and rigorous
  • Strategic in nature
  • Creative
  • Grounded in delivery
  • Visual and tangible
  • Customer-centered
  • Designed for multichannel
  • Aimed at simplifying complexity
  • Focused on finding and creating measurable value.

 「Highly collaborative」が一番に挙げられていますが、これは顧客インサイトを得るのに有効な手段とされているのもので、「参加型デザイン」とか「コ・クリエーション」と呼ばれている創造の方法です。
 そして、顧客中心であり、デザインで終わるのでなく、何らかのビジネス上の成果をあげることを重要視しています。 


2. IDEO社のイノベーションプロセス
 有名なデザイン・ファームであるIDEO社のイノベーションプロセスは次の様に紹介されています。

  1. 理解
  2. 観察
  3. 視覚化
  4. 評価とブラッシュアップ
  5. .実現

出典:Tom Kelley, Jonathan Littman, (訳) 鈴木 主税, 秀岡 尚子, 「発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法」, 早川書房, 2002.7

 一方、IDEOと連携しているスタンフォード大学のデザインスクール「d.school(Institute of Design at Stanford)」の指導するデザイン思考の5ステップは一般に広く知られており、以下のような内容となっています。

  • 【ステップ1】Empathize:共感
  • 【ステップ2】Define:問題定義
  • 【ステップ3】Ideate:創造
  • 【ステップ4】Prototype:プロトタイプ
  • 【ステップ5】Test:テスト


 IDEO社のプロセスとは若干異なりますが、まずは、顧客インサイトを得るところからスタートしており、そのキーワードは「共感」です。
 「共感」は、SympathizeではなくEmpathizeであることに注意が必要です。
 Sympathizeは供給側から顧客をみているのに対し、Empathizeは顧客側に立って、何が困っているのかを顧客と同じように感じることを意味しています。
 よく言われる顧客志向はSympathizeでしかなく、デザイン思考はEmpathizeが重要であるとしており、石井先生の指摘ともよく一致しています。

 先に示したエクスペリエンスデザインを実行しているサービスデザインのプロセスともほぼ一致しており、DISCOVER, DEFINEをより詳細化したものがデザイン思考のプロセスであると考えることができます。

次回はサービスデザインのバイブルともいえる「THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics - Tools - Cases ‐ 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計」も参照しながら作成した、具体的なサービスデザインの手法についてご紹介します。