サービスデザインの適用の効果が最もわかりやすいのが、オムニチャネルとIoTです。オムニチャネルは初回の記事にも書きましたように、顧客起点で発想することが必須条件です。IoTには大きくGE型のIndustry Interenetとドイツから来たIndustry4.0の大きな二つの流れがありますが、いずれにおいてもサービスデザインでのアプローチが必要不可欠となっています。(詳しくは後程の回で述べます)。
そして何よりも、両方とも先人の成功体験という大きな阻害要因がありません。
ということで、今回からは、オムニチャネルについて少し詳しく考察していきます。
世間には、オムニチャネルソリューションと題して、店舗POSとECの連携ができますと謳ったものがでてきていますが、それはフロント部分のほんの少ししかカバーできていません。
日本では時流にのってこういう浅い理解で製品やサービスが出てきて、それが市場の成長を妨げている過去の苦い体験がたくさんあります。売らんがための発想、プロダクトアウト型の発想が日本のソフト業界をダメなものにしていることをどうして理解できないのでしょうか。JISAの白書部会長の経験者としては、非常に残念な思いをしています。
では、本場のアメリカではオムニチャネルはどのように理解されているのでしょうか?
2015年、2016年と毎年6月にシカゴで開催されるIRCE(Internet Retailer Conference Exhibition)に参加してその実態を体験してきました。
オムニチャネルの先駆けとしてはMacy’sが有名ですが、IRCE2015では大手小売チェーンのTARGETがその取り組みを紹介しており、ECサイトにアクセスしていたスマホが店内に入ると、店内モードに切り替わるというシステムを既に紹介していました。
それから一年たったIRCE2016では、オムニチャネルは一般化し、アウトドアのL.L.Beanや大手ドラッグストアであるWalgreensなどでも同様の取り組みを発表し、「Seamless Shopping Experience」を実現している状況がうかがわれました。
そのオムニチャネルの次なる課題はPersonalizationです。IRCE2015において、既にその問題提起がなされていました。
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出典:Bernardine Wu, "RETHINKING AND RE-ENGINEERINGYOUR TECH STACK FOR OMNICHANNEL SUCCESS ",IRCE20105 Technology Workshop 2015.6, pp29
図の下段に示されているように、消費者のプロファイルを良く理解して、タイムリーな情報提供を行って注意を惹くこと、そしてサイトにたどり着いたときには、いち早く必要なものを探し出すことができ、そして望みの場所、日時で受け取ることができることがあげられています。
この機能要求と比較すれば日本のオムニチャネルソリューションとの格差は歴然だと思います。
次回は、このオムニチャネルのしくみをいかに実現するのか、サービスブループリントの説明も交えてご紹介します。