これまでサービスデザインとの関連でIoTについて触れてきましたが、今回はIoTについて一度きちんと整理をします。
IoTには大きく2つの流れがあります。ひとつはPorter教授が"Smart Connected Products"と呼ぶ、GE型のIoT。もう一つはシーメンス、Bosch、SAP連合がひっぱるIndustry 4.0です。
両者とも下記に示す同じシステムアーキテクチャです。
出典:https://hbr.org/2014/11/how-smart-connected-products-are-transforming-competition
GE型とIndustry4.0型との一番の違いはアーキテクチャ上層部の「アプリケーション」です。
誤解を恐れずに言うとGE型が「攻め」、Industry4.0型が「守り」ということができます。
Industry4.0については、実はMESという取り組みが世界中で行われていました。MRPで立てた生産計画とFA機器との間をつなぐものとしてMESのアプリケーションが存在していたのですが、課題になっていたのは工場内の生産機械やその他の生産設備との通信でした。各メーカーが自分たちの考え方で設計していたために相互接続できないということだったのですが、M2Mの標準化によって、いわゆるヴァーチャルファクトリーの実現が可能になり、それがIndustry4.0としてプロモーションされるようになったという背景があります。
MESは欧米とは異なり日本ではほとんど導入されていないので、この背景を理解していない人も多いと思います。
そのため、Industry4.0の目的は生産リードタイムの短縮や生産性の向上であったりします。
SAPが代表例として紹介しているHarley Davidsonの事例では、ユーザがWebでパーツを自由に組み合わせて選択したカスタマイズバイクを、工場の生産ラインに自動で連携し、納期を回答するとともに、生産指示が自動で出されるというものです。
それまでは手作業でくみ上げていたので、数か月かかっていた納期が1か月未満に短縮されたという成果が示されています。
ただ、この内容はこれまでのシステム化の取り組みと大きく異なるものではなく、サービスデザインの手法を入れる必要はなく、従来型のBPMの取り組みで十分です。
一方、GE型は「攻め」なので、顧客に新しい価値を提供することが主眼となります。Porter先生がSystem of Systemsと呼ばれる全く次元の異なる事業を提供することになります。
次回は、この点を再度確認していきたいと思います。