オムニチャネルからデジタル・リテールへ

ちょうどこの記事を書こうとしていた時に、AmazonがWhole Foods Marketを買収というニュースが飛び込んできました。リアル店舗を開店するという話題もあり、ネット疲れというようなコメントをされた方もおられたかと思いますが、まさに同感です。

ネットでの購入において、快適な購買というものは重要な要素で、競合サイトとの重要な差別化要素となります。しかしながら、現在のネットでできるのはそこまでであって、わくわくするような購買経験を提供することはまだできません。

商店街やモールをぶらぶらするのはなぜでしょう。思いもかけないものに出会えるからではないでしょうか?

ネットでのレコメンデーションはあくまでもそれまでのそのサイトでの行動に基づくものであって、意表を突くようなものに出会えることはまずありません。

なので今、リアル側の面白い仕掛けもあってリアルへの回帰が起きているのだと思います。

 

ここで大事なのは、顧客が店に行ってとても楽しい経験ができることです。わざわざ出向いたのに、これならネットの方がマシと思わせては、その店はつぶれていきます。

 

小売りにおけるデジタルトランスフォーメーション、デジタル・リテールという言い方も出てきていますが、店舗での楽しい購買経験を提供するための仕掛けを、ICX2017の一環で訪問した、ダラス郊外の Neiman MARCUS で見てきました。

memory mirror というこのデバイスは、コスメ、サングラス、アパレルのコーナーに設置されています。

コスメのところでは、メークアップしてもらっている 様子が収録され、電話番号を登録するだけでその顧客のスマートフォンに後程転送されます。使用した化粧品のリストが掲載されており、気に入れば購入することができます。

アパレルのコーナーでは試着した様子が同様に記録され、スマホでチャックできるだけでなく、全身大のディスプレイで比較チェックすることができます。サングラスも同様です。

もちろんスマホのために無料Wifiが準備されています。

真ん中の写真にある「A mirror that remembers You」というキャッチが私たちのハートをつかんでくれました。

 

彼らが努力しているのは顧客の来店時におけるいろいろな「friction points」をなくすことです。こうしたデジタルデバイスは商品選択、ロケーション案内などにも準備されているほか、フロアの中央にカクテルコーナーを設けたり、トイレや休憩コーナーでの様々な嬉しくなる仕掛けが準備されているなど、その心配りはデジタル一辺倒ではありません。

その結果、何度も訪れてみたいと思わせる店舗になっています。

 

彼らもMacy'sの様にお客様に喜んで頂けるのであればデジタルの仕掛けを積極的に活用しようという探求がNEIMAN MARCUS ILABにおいて成されています。

彼らはこのことを「brick and mortar innovation」と呼んでいますが、ここにデジタルトランスフォメーションを考えるにあたっての大事なメッセージが込められています。

 

次回は、レストランでのSense of Wonderな体験についてご紹介します。