メーカーのオムニチャネル その2  これはゴールではない!

前回はパイロット店舗としてのメーカーの位置づけをご紹介しましたが、もう一つの考え方として、流通チャネルとターゲット顧客を分けるという方法もあります。

量販店と専門店では顧客層が異なるはずなので、メーカーの直営店やECサイトは量販店の顧客を奪わないように顧客層を設定し、そこに特化した販売を行うというものです。

 

オムニチャネルのキーワードとして、次は「パーソナライゼーション」であると前に記述しましたが、まさにそのアプローチを行うというものです。

 

ボリュームゾーンとは異なる商品を設定することで、一般商品では満足できない顧客層を掴むことを目的とします。

メーカーのどうしても克服できない課題として、最終消費者/購買者の情報を入手できないという壁があります。

これまでメーカーでは、商品開発に必要な情報を得るために、調査会社等による市場調査や、インターレストグループ、グループインタビューなどの消費者リサーチを行ってきましたが、これは消費者をマスでとらえる時にのみ有効な手段でした。

 

顧客の好みが多様化してきたため、この手法が通じなくなってきているのが事実で、消費者情報を知っているはずの量販店や専門店とのコラボを模索したり、ネットに明るい企業ではオウンドメディアによる顧客情報を収集しようとしています。

 

ただ、いずれも情報が偏っているというリスクがあります。量販店や専門店とのコラボではそれらの小売りが把握している顧客情報に頼ることになり、本当の顧客の姿は見えません。オウンドメディアでは、DMPを導入し3rdパーティーのデータを組み合わせることによってネット上でのプロファイルはある程度分析できるようになっていますが、それはあくまでもネット上での姿であってリアルでの顧客の姿とはなるものです。

さらにこれらの情報ではセグメント化はできますが、パーソナライズ化するには情報の質や粒度が不足しています。

 

メーカーでのオムニチャネルは、小売業のそれとは異なり、より深い顧客インサイトを得るためであると位置づけることが必要です。そうすることによって流通チャネルとの無用な軋轢をなくすことが可能になります。

 

前回のパイロット店舗と今回のスペシャリティチャネルはいずれかを選択するというものではなく、両方を併用することが大事です。

 

そして、大事なのは以前にも書きましたが、これはデジタルトランスフォーメーションの入り口にすぎないという認識を持つことです。副題の「これはゴールではない!」というのはそういう意味です。

 

次回からは、日本では大きく出遅れてしまっているデジタルトランスフォーメーションについて解説していきます。