BSCを正しく理解する

 私がBSCに取り組みを始めたのは1998年ごろからで、その後2006年度から隔年で米国で開催されるBSCのExecutive Conferenceに参加しました。私が参加した回のテーマは下記の通りです。残念ながら各回とも日本人の参加者は私一人でした。

 

2007 Executive Conference

PUTTING YOUR PEOPLE WHERE YOUR STRATEGY IS

~Creating a High-Performance Organization

 

2008 Business Performance Conference

Measure, Monitor & Manage What Matters

 

Palladium’s Business Performance Conference 2010

Measures That Matter

 

2010年の段階でBSCは一旦成熟した状態になったので、その後は参加していませんが、それまでの10年間でBSCは大きく成長しました。

 

BSCはその発展段階に応じて3世代に分けることができ、それぞれ本が出版されています。

 

第1世代のBSC

 

 私がバランスト・スコアカードに取り組み始めたのは、1998年度にJISA(社団法人情報サービス産業協会)の行政情報化委員会の部会長を務めてからです。この研究活動で、米国会計検査院(GAO)「エグゼクティブガイド~情報技術投資のパフォーマンス測定と成果の実証」(1997年9月)と米国国防総省(DOD)「投資としての情報技術(IT)管理とパフォーマンス測定についてのガイド」(1997年2月10日)を分析したのですが、その中でIT投資のパフォーマンス評価としてBSCを使うことが示されていました。

 ただし、このガイドラインには次の2つの視点が含まれていて、すぐには理解しがたいところがありました。

  1. 導入する情報システムやネットワークについての評価
  2. 情報システム部門や情報化人材についての評価

 そこで、特に1.の部分に特化して、当時専修大学の教授であった櫻井先生といっしょに、JISAの1999年度の事業で「バランスト・スコアカード活用による情報化投資評価の研究」というものに取り組みました。おそらく日本ではじめてBSCによるIT投資評価の実践方法をまとめたものだと思っています。

 この時に参照したのが、BSCの第1世代の理論と事例をとりまとめた「吉川武男訳『バランスト・スコアカード』生産性出版、1997年」です。

 第1世代のBSCでは、指標間(事前指標と事後指標)の関係性を定義していきますが、とても作成が困難でコンサルタントや戦略担当者の自己満足の道具となっていたのかもしれません。

 このような反省から、第2世代のBSCが登場します。「キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード」ロバート S・キャプラン、デビット P・ノートン著、 櫻井通晴 著(東洋経済新報社、2001年)がそれです。

 この内容については次号で説明しますが、戦略マネジメントツールとしてのBSCの基本体系が第2世代では整理されます。