BSCを使えるようになる 戦略マネジメントツールとしてのBSC

前回BSCはKPIの測定ツールではなく、戦略マネジメントツールとして理解すべきであることをお伝えしました。この理解においてとても重要となるのが、以下の図です。

出典:「キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード」ロバート S・キャプラン、デビット P・ノートン著、 櫻井通晴 著(東洋経済新報社、2001年)

 

 この図に示すように 目標設定時には「財務」から「学習と成長」の方向に検討を進めるのですが、一方、その実現は、「学習と成長」から「財務」へと成果の連鎖があります。財務指標をゴールとして設定し、その実現のためにはどのような顧客価値を提示するのか、その新しい顧客価値の提供を実現するためには、特にどのビジネス・プロセスを競合他社に比してすぐれたものとする(「卓越」する)のかを定めます。
 すなわち、バランスト・スコアカードを設計することは、自社なりの成功のシナリオを描くことに他なりません。
 そして、全社のバランスト・スコアカードは最初に設計し、次いで事業部門→部・課→個人へとブレイクダウンさせ、個人や部門の業績評価を経営戦略とリンクさせるのです。

 ここで重要になるのが、成功のシナリオを全社員が共有することで、その可視化ツールとして「戦略マップ」を作成します。

 この戦略マップですが、我流で作成し、戦略の可視化・共有化ができていないことを良くみかけます。そのために、第2世代のバランスト・スコアカードでは、下記に示す、戦略マップのテンプレートが準備されました。

出典:「キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード」ロバート S・キャプラン、デビット P・ノートン著、 櫻井通晴 著(東洋経済新報社、2001年)

顧客の視点に示されている顧客への3つの価値提案、「卓越した業務」、「顧客関係重視」、「製品リーダーシップ」、これがすなわち企業がとりうる戦略になります。財務の視点からたどると、企業の価値向上(米国式には株主価値の改善)のためには、収益増大と生産性向上の両方を考える必要がある。この収益増大のためには、新規および既存の顧客に何をアピールするのかを考えるのであるが、その選択肢が先に示した3つの戦略となる。3つを全て狙うのか、一つに絞るのかは上級経営者に求められる重大な意思決定となります。

 

さて、このテンプレートにおいて今一つ明確ではないのが、「学習と成長の視点」です。この4つめの視点について劇的な進化をさせ、IT投資との関係を明確にさせたのが、第3世代になります。次回はこの紹介をします。