SDGC2018 Discover to Deliver
今年のService Design Global Conference(SDGC)は、10/10~10/12にダブリンで開催されました。
今年のテーマは、
Discover to Deliver
でした。
左図は有名なサービスデザインのプロセスを示すダブル・ダイアモンドですが、今年は特にDeliverに焦点があたった内容となっていました。
さらに付け加えるならば、Deliverの中のImplementation(実装)を強く意識した内容となっていました。
Implementationには二つの要素があります。
ひとつは昨年度からのテーマである、組織への浸透=組織文化への変革です。
もうひとつが、デジタル化への対応です。
IT側からのアプローチでは、必ずと言っていいほどなおざりにされるのが、一つ目の課題です。
このブログのBSCのテーマでも述べてきましたように、情報資本の整備だけでは不十分で、人的資本、組織資本のレディネスも同時に高めないと、戦略は実現できません。
サービスデザインはCo-Creationを基本としているので、人的資本、組織資本のレディネスを高めているといえます。
一方、サービスデザインはデザイン系の方が中心となって発展してきたので、「デジタル化への対応」という点で、特に最近の著しい技術進歩への対応について懸念があります。AI、IoT、OpenData、Cloudなどを活用できないと、新しい顧客経験をデザインできない状況になってきています。
デジタルトランスフォーメーションのテーマで述べてきたように、「急速にデジタル化が進む」という認識が広く一般的になってきていることの証左だと考えられます。
デジタルトランスフォーメションの目的は、「新たな顧客経験を提供することである」ということは以前にも記述しました。顧客経験をデザインする手法であるサービスデザインは、この目的に適合するものでありますが、「KAIZEN」の枠組みから出れないというリスクもはらんでいます。
顧客起点にたって、潜在するペインポイント(MITのデザイン思考ではLatent Needsと表現しています)をしっかりと認識できていれば、KAIZENに留まることはないのですが、なかなか供給者視点が抜け切れないことが多く、このため考案された新たなしくみに「素晴らしい経験」というレベルに達しないものが多くなります。
この点は、IT系のプロジェクトとも深く共通するところがあります。
今回のカンファレンスでは、「全く新たな顧客経験をデザインする」ために、AI、IoT、OpenData、Cloudをいかにうまく活用するかという観点からのプレゼンやワークショップが多くみられました。
今年のIRCE2018でも同様のプレゼンがあったのですが、デジタル化が急速に進むため、「今日のNewは明日には当たり前になってしまう」ということがやはりプレゼンされていました。
このため、ワークショップや講演では、デザイン系の人にAIとは何か、IoTとは何かを丁寧に説明していました。
(自分の大学院での講義のレジュメを見ているようで、面白かったです)
欧米の参加者とも会話しましたが、デジタルトランスフォーメーションが進んできているので、サービスデザインにおいても、デジタルを前提として考えざるを得ない状況になっているということを共通に語っていました。
このような背景から、今年のAwardも昨年度までと比べて、「デジタル」の要素を強く含んだケースが受賞していました。
米国の地方警察のデジタル化事例もその一つでしたが、事例の紹介はまたの機会にします。